DPC病院のはなし

DPC病院のはなし

大館市立総合病院では平成24年度から「DPC制」を採用しております

 

 正確には「診断群分類(DPC)にもとづく1日当たり定額報酬算定制度」(以下、DPC/PDPS ※1 とします)と言います。

 病院広報やポスターでもお知らせしておりますが、これまでの出来高払い方式すなわち「かかればかかっただけの診療報酬」を(保険者 ※2から)病院へ支払われておりましたのが、世界基準とも言える“診断群分類”で患者さんの疾病を分類し、それにもとづいて「あらかじめ決められた診療額を保険者が支払う制度」すなわちDPC/PDPSを、いよいよ平成24年4月から採用しております。

 

 

 もう少し細かく説明しますと、本制度は現在のところ入院患者に適用され、「手術」「リハビリテーション」などを除く「入院基本料」「検査料」「投薬」「種々の処置」などが“一日当たりの入院点数”として“診断群分類”別に包括して算定されます。すなわち〔一日当たりの入院点数×入院日数=入院医療費〕ということになります。そしてとくに急性疾患 ※3 の場合、標準的な入院日数を超えて入院が長引いたときには、それ以降の入院延長に関して診療報酬が低く抑えられ、費用の一部が病院の“持出し”になることもありえます。ただし入院患者さんのうち、健康保険を使わない自費診療(正常分娩など)や精神科へ入院される方々などは対象にはなりません。

 大事なことは “診断群分類”別に包括された医療費が、従来の出来高払いに対してどの位に設定されるか、ということです。一般的には出来高払い相当の医療費請求金額の(例えば)1.2300倍とか1.2500倍などといった数値を乗じて病院の診療報酬となります。これが≪医療機関別係数≫と言われるものです。この数値は、病院の機能や体制のほか重症患者への対応能力や高度医療の提供能力などをもとに、国の機関が審査の上、各DPC病院ごとに与えられています。数値が少しでも高く設定された方が、病院経営面で有利なことは言うまでもありません。そしてそこには病院のインセンティブも働いてきます。
 今年4月に通知された当院の医療機関別係数は県下の他の病院に近似している数値ですが、病院の施設基準※4のさらなる整備により、今後上乗せすることが可能な係数となっております。

 この定額の支払い方式は、多少の制度上の差こそあれ先進諸国では普及の一途にあります。もちろん国策のひとつとして行われているのですが、そのねらいは何でしょうか。
 それは医療の「標準化」を促進し「医療費を効率的に使う」こと、つまりは医療費の抑制にも通じる点です。DPC/PDPS では回復への最短距離を行なった病院に利益が発生する仕組みですので、患者さんにとっても利益があり、医療費の削減につながるというわけです。逆にムダあるいは過剰な診療をして医療資源を効率的に活用できなければ、やがて病院経営は下向いてしまうことになります。したがって本制度は、急性期病院 ※5 においてとくにその意義が濃厚に反映されます。

 私たちの病院が全国のDPC病院の中で、医療資源をどの様に節減しているのかいないのか、思わぬ合併症や副作用などで長い入院を続けざるをえない患者さんが多いのか少ないのか、臨床指標(種々の疾患の治療成績など)は優れているのかそうでないのか、そして地域のために本当に役立っている病院なのかどうか、などということが、他のDPC病院との比較(ベンチマーキング)によって“明白になる”というもうひとつの側面を本制度は併せ持っております。さらには医療の質や病院の品性といったものすら浮き彫りになり、そこから病院の努力目標もはっきりしてくるというわけです。

 医療過疎にあえぐ当地域にあって、はっきり言って絵に描いたような急性期病院にはなれないかも知れません。しかし少なくとも、医療コストや医療資源にムダ遣いがないかを見直し、もっと治療成績を上げて医療サービスを向上させる、すなわち医療の「価値」を高めることはできるはずだと思っております。また情報公開(医療の透明化)に努めることによって、地域社会に対する「説明責任」も果たせるのではないかと考えております。

 

 

 さて、患者さんにとってはDPC/PDPSはどの様な影響を与えるのでしょうか。

 健康保険その他で医療費の大部分が賄われる訳ですから、患者さん個人が窓口で負担する額には大きな変化はないでしょう。むしろ順調に退院出来ればその分医療費が少なくなることになるでしょう。ただしいくつか、患者さん方にご理解を頂きたいこともあります。

 たとえば、関連した病気(症状)ならもちろん致し方ないことですが、当該疾患と無関係でかつ不急の疾患の場合には、「入院ついでに、あれも治しておきたい、これも治しておきたい」というご希望があっても、お応えしづらくなるだろうということです。というの も、残念ながら本制度は“1回の入院につきただ1つの病名(診断群分類)でしか保険請求できない”ルールになっているからです。
 また、手術(入院)予定の患者さんの場合ですが、検査を外来時点から開始して入院期間をできるだけ短くするなど、少しでも多くの患者さんに効率の良い治療を提供することが重要だと考えておりますので、この点もどうかご理解下さい。

 DPC病院になることができた当院ですが、職員一同は医療サービスの充実や医療コストの見直しなど不断の対策・整備を進めておりますが、これからが正念場と考えております。そして地域の皆さまには、どうか当院に求められている“役割り”をご理解頂き、この地域の医療を守るためにさらなるご協力をお願いしたいと思います。

※ 1 DPC/PDPS=Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System 
※ 2 保険者=組合員から保険料を徴収し病気の際に医療費を病院に支払う健康保健事業者。市町村が担当する「国民健康保険組合」や、事業別の「健康保険組合」などを指します。
※ 3 急性疾患=急激に発症し、かつ(または)経過の短い疾患の総称。
※ 4 施設基準=保険診療の一部について、医療機関の機能、設備、診療体制の基準を定めることにより安全面やサービス面等を評価するもの。(保険診療における診療の質を確保するために設けられています)
※ 5 急性期病院=急性疾患や慢性疾患の増悪などで緊急・重症な状態にある患者に対して、入院・手術・検査など高度で専門的な医療を提供する病院。