産婦人科

産婦人科からのお知らせ

≪わが国でも頚がんの予防ワクチンが認可されました≫

 近年、HPVの感染を予防し、頚がん発症を抑える「ワクチン」が開発され、世界の100カ国以上で供用出来ているのに、日本ではまだ…とお伝えしていました。しかしわが国でもいよいよ、ワクチンの臨床使用が認められるようになりました(平成21年12月)。

 「子宮頚がんは予防できるがん」という認識が、近年徐々に定着してきました。

≪パピローマウイルス感染で、頚がんのリスク!?≫で述べておりますように、子宮頚がんの発症には「高リスク型」HPV、すなわち発癌性ヒトパピローマウイルスの感染が大きく関わっていることが判明し、その発生機序が解明されてきたためです。とくに近年わが国では、妊娠・出産年代の20歳代、30歳代の頚がんが明らかに増加傾向にあり、HPVの高率感染との関連が指摘されています。

 このワクチンは、代表的な「高リスク型」HPV、すなわちHPVの型でいう「タイプ16」と「タイプ18」の感染を予防するワクチンです。タイプ16やタイプ18のHPVは、世界的に高頻度に検出される型で、とくに悪性化するスピードが早くがん化しやすい型です。両型だけで世界各国で検出されるHPVの4分の3前後を占めています。ですから、この両型の感染を予防するワクチンが、世界各国で頚がんの一次予防として活用されているのです。頚がんは「治療するがん」から「予防するがん」へと、大きく変貌しているのです。

 当科でも、この頚がん予防ワクチンを接種(注射)できます。
 接種ご希望の方は、当外来を受診・診察のうえ、お申し込み下さい。予約制です。

※頚がん予防ワクチンの効果は?

 その効果は100%ではありません。タイプ16とタイプ18に限って言えば予防効果はほぼ100%ですが、それ以外にも「高リスク型」HPVがあるため、ワクチンだけで全ての頚がんを予防することは不可能です。最近の研究によれば、現行のワクチンでも頚がんの予防効果は70%を超えるものと推定されていますが、100%ではありません。したがって厳密に言えば、「ワクチン接種後も細胞診による定期検診が望ましい」とされています。

※だれでも接種できるの?

 @第一の接種推奨対象:11〜14歳の女児
 最も効果的な接種時期は、性交渉前のHPV未感染状態といえる10歳代前半の少女を対象とした接種が推奨されています。高い安全性と高い抗体価(免疫の力)が得られるというデータがあります。
 わが国の性交経験率は、中学3年までは概ね10%以下であるのに対して、高校生になると20%以上に増加する傾向が見られています。したがって、性交経験者が増加する前の中学生までにHPVワクチンを接種すると効率が良いため、11〜14歳の女児が第一の接種対象として推奨されているのです。

A第二の接種推奨対象:15歳から45歳までの女性
 15歳以上の女性に対しても、HPVワクチン接種は推奨されます。HPVは主に性行為で感染するため、15歳以上でも性交経験のない女性は全面的にHPVワクチンの利益が得られます。
 また、既に性交経験があっても(既にHPV感染機会があったとしても)、接種後に新たに侵入してくるウイルスに対する予防効果が得られることや、タイプ16、タイプ18以外の「高リスク」HPVのうち系統が近縁にある他型HPVに対する効果(クロスプロテクション効果)もあるとされているため、接種の意義は十分あると、現在のところ考えられています。
 日本産婦人科医会では、医療経済学的な検討により「45歳までの女性はワクチン接種により恩恵を受ける」と見積もられています。
 ただし、このワクチンは、子宮頚部病変がすでにある方に対しては治療効果がありません。


※ ワクチン接種の方法や副作用は?

 投与方法は、0、1、6ヶ月後の3回にわたって一定量(0.5ml)のワクチンを腕に筋肉注射をします。これで免疫の完成です。
 副作用は軽くおおむね安全とされておりますが、ワクチン成分に対する過敏症またはアレルギーなど、一般的な副作用が考えられます。
 妊婦、産婦、授乳婦は、安全性が確立していないので接種できません。なお、生ワクチンの接種を受けた場合27日以上、他の不活化ワクチンの接種をうけた場合は6日以上の間隔を置いて接種しなければなりません。

※ 費用はどのくらい?

 現在のところ、わが国では保険が効きません(自費負担、全行程で約5万円)。
 自治体などによる費用の助成措置も、講じているところはほとんど無いのが実情です。今後の動向が注目されます。(平成22年3月)


≪パピローマ・ウイルス感染で、頚癌のリスク!?≫

 ヒト・パピローマ・ウイルスHPVの感染が、頚がんの発生と深い関係にあることが解っています。
 すなわち高い確率で、頚がんはHPV(高リスク群)感染が原因となって発生することが、近年の研究で明らかとなってきました。
 ですから、このHPV(高リスク群)に感染しているかどうかを知っておくことは、発症のリスクを知るうえで参考になり、検診の“間隔”を決める際にも大変役立つのです。

 以上より当科では、とくに頚がん健診(細胞診)の結果が「Va以上」の方には、精査と同時にHPV(高リスク群)感染の有無を調べることをお勧めしています。(ただし現在のところ有料です。)陰性であれば、検診の間隔が延びます。

※ HPVは、多くは性交渉によって感染し、過去一回でも性交渉の経験があれば誰でも感染の可能性があります。現に10〜30%に感染者が見つかるという非常に多いのもです。ただし、個人の免疫力によって自然消滅も多いとされております。

※ HPVには100種類もの型があり、「高リスク群」と「低リスク群」とに分類されます。「低リスク群」は、尖圭コンジローマ(外陰部にイボイボのできる性感染症)の原因になります。こちらの方も、最近とくに増加中です。

※ 「高リスク型」のHPV(タイプ16、18、31など)は、「低リスク群」と同様、比較的若年者に多く見つかりますが、「高リスク型」が見つかった方が必ず頚がんになるわではありません。
 とくに、何年も持続感染がある場合に頚がんになりやすいと言われているのです。ですから陽性者は、そのタイプによっては毎年検査することも必要になってきます。

≪更年期女性に「関節リウマチ」!?≫

 更年期頃の女性に、手の指が第1関節のところで腫れて変形! 指も曲がったままで、冬場にはとくに手仕事の際、指に痛みがでる。そんな思いをしている方、おりませんか? 
 一応だれしも『関節リウマチかしら…』と考えますね。それでさっそく、整形外科等に相談。で、リウマチの検査をしても、異常なし…。
 
 実はこれ、「へバーデン結節」である可能性が高く、関節リウマチなんかではありません。「指曲がり症」ともいわれ、加齢にともなう変形性関節症のひとつです。
 手の第一関節に変形や痛みをきたす疾患はいくつかあると言われます。(慢性)関節リウマチや痛風が有名ですね。
 でも、更年期頃の主婦に意外に多いのがこの「へバーデン結節」だそうです。男性にもあるとされますが、何と言っても更年期頃の女性(主婦)が多く、男性の10倍! 姉妹間、母娘間で“遺伝性”を指摘する人もおりますが、原因はよくわかっておりません。
 とくに調理など手を使う仕事と関係があると指摘する向きもあります。人さし指・中指が高頻度ですが、どの指にも現れます。
 
 そういうご相談があれば、さっそく整形外科にご紹介いたしますが、治療法は、局所の安静がいちばん。 そして非ステロイド系鎮痛消炎剤や軟膏で痛み(炎症)をとり、テーピングをしてみるのも良いでしょう。

 炎症がとれれば温熱療法・運動療法ということだそうですが、画期的な治療法はないのが実情です。やがて無痛性となり、多少の変形を残して症状が固定するといわれます。


≪妊婦さんの静脈瘤≫

 静脈瘤は妊娠中期から末期に下肢・外陰部・腟の表在静脈がふくらみもりあがる状態で、妊婦の約10%に発症します。下肢静脈瘤は静脈血を心臓に戻す血管内の静脈弁が機能不全を起こし、還流障害を起こすことが原因で起こります。妊娠中はエストロゲン(卵巣などに由来するホルモン)による血管拡張作用と、大きくなった子宮のもと大静脈が圧迫されて静脈還流が悪化するため、血流がうっ滞し静脈内圧が上昇した結果、表在静脈がふくらんでもりあがり、蛇行します。

 静脈瘤は無症状のことが多く、長時間の立ち仕事のあとや午後に、足のだるさや浮腫・鈍痛などを感じる程度です。しかし、痛みや下肢のはれがある、蒼白、熱をもっている、触ってみて硬いなどの症状が強い場合は、血栓性静脈炎や深部静脈血栓症といった合併症が疑われますので受診が必要です。静脈瘤を早期に発見するためには、ときどき鏡で膝裏やふくらはぎをチェックするとよいでしょう。

 静脈瘤の悪化を防ぐためには、日中は下肢の血流やうっ滞を防ぐための弾性ストッキングを着用し、夜間は足を高くして休みましょう。きつい下着やガードルの着用、長時間の同じ姿勢は避け、ときどき足首や膝の屈曲・伸展をさせるような下肢の筋肉運動を取り入れましょう。弾性ストッキングは市販されていますので、購入時はきつすぎないサイズを選択するとよいでしょう。水中ウォーキングなど水中での運動は、効果的に静脈還流を促進させることができます。日ごろから、食生活に留意し便秘を予防することや適切な下着や衣類の選び方、下肢のストレッチなどの軽い運動を行っていくことが、静脈瘤の予防につながります。
(母子衛生研究会発行「母子保健」:妊産婦のマイナートラブルより)


≪女性の尿失禁には骨盤底筋体操が効果的≫

 尿失禁(尿もれ)とは、自分の思いに反して尿が漏れてしまう状態です。
 女性は男性に比べて尿道が短いことに加え、出産のために尿道を締める筋肉が弱くなることから、尿がもれやすいのです。女性の尿失禁は、ほとんどが、くしゃみや咳など、おなかに力が入ったときにもれる「腹圧性尿失禁」か、急におしっこがしたくなり、トイレまで間に合わない「切迫性尿失禁」、またはその2つが混ざった状態の「混合性尿失禁」です。
 腹圧性尿失禁も切迫性尿失禁も、下着を替える程でもないという程度なら、「骨盤底筋体操」で軽くなることがあります。ただし、それまでは根気よく続ける必要があります。もれない人でも、将来の尿失禁の予防ともなりますので、ぜひ試してみて下さい。
 尿失禁は「わずらわしいけれど、仕方がない」と、あきらめる病気ではありません。骨盤底筋体操や膀胱訓練をしても症状が軽くならないときは、医師に相談してみましょう。

※ 骨盤底筋体操
腟や肛門を締める・緩めるという動作を、おのおの5秒間くらい交互に続ける体操です。全体で5分から10分位続けます。仰向けがやり易いのですが、立ったまま、イスに坐って、机に両手をついてなど、やり易い姿勢を探して試してみましょう。おなかに力が入らないようにするのがコツです。

※ 膀胱訓練
トイレに行きたくなってもすぐに行かないで、10分から30分くらいがまんをして、膀胱に尿がためられるようにする訓練のことをいいます。がまんするときには、骨盤底筋体操の動作が役にたちます。
(日本医師会発行「日医ニュース」より)

≪妊娠中の服薬 あわてずに相談を!≫

○気づかずに飲んでしまうことも・・・
 妊娠しているかどうかも本人は気づきにくく、その時期に薬を服薬してしまうことがよくあります。赤ちゃんのかたちができる妊娠初期(特に第4〜7週)では、薬の服用は慎重にする必要がありますが、赤ちゃんに悪い影響があるとされる薬はそう多いわけではありません。
 特に赤ちゃんに影響があるとされる薬には「てんかん薬」や「喘息の薬」、「抗がん剤」などがありますが、母体とおなかの赤ちゃんのために“あえて薬を飲まなければならない場合”もあります。

○自己判断は危険
 薬を飲む量を少なくすれば副作用が出ないのではないか、と自己判断するのは危険です。せっかく飲んだ薬の効果が出ないばかりか、副作用を避けられない場合もあるからです。
 また、消炎鎮痛剤の中には比較的薬の影響が少ないとされる妊娠後期でも、赤ちゃんへの悪影響があると報告されている薬もあるので注意が必要です。服薬に関しては必ずかかりつけの医師に相談しましょう。(提供:日本医師会2010.12)

 ※妊娠中の服薬についての相談は、下記にもどうぞ
  独立行政法人国立成育医療研究センター
  妊婦と薬情報センター 電話03-5494-7845
  (独立行政法人 国立成育医療研究センターのホームページ)