地域がん診療病院

院内がん登録

 院内がん登録とは、がんの診断や治療を受けられた患者様について、がんの診断・治療・予後に関する情報を登録・収集する仕組みのことをいいます。登録の目的は、がん診療の向上とがん診療患者様・ご家族への支援に役立てることで、登録の対象となる疾患は、原発性の悪性新生物およびその他の政令で定める疾患です。

 当院は2010年に秋田県の地域がん診療連携拠点病院の指定を受けたことにより、「がん対策基本法」「がん登録推進法」に基づいて2010年より院内がん登録を行っています。

 

がん登録情報の主な利用目的

•がんに関する医療活動の把握・統計資料の作成

•予後調査

•国立がん研究センターがん対策情報センターへの届出

•国がん登録への届出(国立がん研究センター・秋田県総合保健事業団疾病登録室)

•秋田県がん診療連携協議会へ提出

 

2023年 院内がん登録データ報告

 当院は秋田県のがん診療病院として、当院または紹介元で悪性腫瘍(がん)と診断された患者様の情報をカルテから読み取り、そのがんについて部位をはじめ病理診断その他の必要な情報をコード化し、国立がん研究センターや秋田県の疾病登録室へ提出しています。


 また、データはただ提出するだけでなく、最終的に当院を受診されている患者様やご家族に情報提供することにより、はじめて意義のあるものになると思いますので、毎年提出したデータを使って色々な角度から当院のがんの傾向や治療内容などを分析し、当院ホームページに掲載しています。


 2023年は、2018年から2022年のがん登録データのまとめと、5大がん(胃・大腸・肝臓・肺・乳腺)+前立腺がん+子宮がんの詳細な情報をご報告いたします。


 (画像部分はマウスをあてると拡大表示します)

 

はじめに、院内がん登録全部位5年間(2018〜2022年)の登録件数を表にしました。

2020年はコロナ感染症の影響で、2019年より100件以上減少しています。自施設診断症例が減少し、他施設診断で当院へ紹介される症例も減少しました。

 

グラフで見るとコロナウイルス感染症ピークの2020年は、特に胃がん・肺がんの減少が目立ちます。

その後2021年2022年と徐々に他院からの紹介や、自覚症状ありで受診する患者さんが増加してきました。

 

登録数を割合で見ると、2020年はやはり胃がん、肺がんが減少していますが、乳がん・前立腺がんはコロナ禍も関係なく徐々に増加しています。

 

登録件数の上位8部位の推移はこのようになっています。

当院の男女登録数合計では、1位大腸がん・2位胃がん・3位肺がん・4位前立腺がん・乳がん(ほぼ同数)・5位子宮がんとなっています。

 

 

2019年の国立がん研究センターの統計によりますと、日本人の2人に1人ががんに罹患し、最も多い部位は大腸がんで、肺がん、胃がん、乳がん、前立腺がんの順となっています。

男女別では男性1位は前立腺がん・女性1位は乳がんと、男女特有癌となっています

 

 

当院のデータを男女別に比較すると、男性は1位大腸がん・続いて胃がん・前立腺がん・肺がん・膀胱がんの順になっています。

女性の1位は大腸がん・続いて乳がん、子宮がん、胃がん、肺がんの順で、男女別に見ても共に大腸がんが1位となっています。

 

 

また、当院の男女別5年推移で見てみると、男性の登録数が多く女性の登録数は男性の70から80%となっています。

しかし、2022年は男性の登録数が胃がん、大腸がん、肺がんで60件ほど減少し、女性の登録数が胃がん・肺がん、乳がん・卵巣がんなど合わせて60件以上増加したため、女性の登録数が男性の90%まで増加しています。

 

 

当院では全国平均と比較すると高齢層の登録数が多く、若年層の登録数が少ない。

そして2020年は40代を除き全体的に登録数が減少しましたが、2022年は60代と80代が増加しています。

また、全体では65歳以上が常に80%以上を占めていて、年々初回登録時の年齢が高齢になってきています。

 

ここまで男女別や年齢別に見てきましたが、ここで見方を変えて「診断および初回治療をどの施設で開始・実施したかを判断する」症例区分で比較したいと思います。

2020年は前年に比べ、当院でがんと診断した症例が60件以上減少しています。

また、他院より紹介され当院で初回治療を開始した症例も40件減少しています。2021年から自施設診断は増加してきましたが、他施設からの紹介数は横ばいとなっています。

 

2022年のみの症例区分を部位別で見ていきます。症例区分は、1当院は診断のみ・2と3は当院で診断して初回治療を開始、あるいは継続となっています。

4と5は他施設で診断して当院で治療開始、あるいは当院で継続治療(他施設診断の乳癌術後の放射治療などがあげられます)

6は他施設で初回治療終了後、当院へ紹介という内容になっています。

部位別に見ても子宮頚部を除いて、自施設診断・自施設治療は70%以上となっています。

 

部位別の症例区分をグラフにすると6-5になり、症例区分では胃がんは他施設より治療の為の紹介が20%と多く、逆に子宮頚がんでは診断のみの症例が他部位より多く24%となっています。

6-6は責任症例の割合になりますが、責任症例とは自施設で初回治療を行っている、または他施設の治療を継続している症例になります。

全体的にみると80%以上が自施設責任症例で、前立腺がん・子宮頚がんでは手術のために大学病院へ紹介というケースが多くなっています。

 

そもそも当院を受診した一番最初のきっかけはなにか、というのが発見経緯になります

1検診や人間ドック、2他疾患の経過観察中、3の剖検は(死亡解剖の時に見つかったがん)該当はありません。

4のその他は自覚症状があって受診した症例、5の不明は他院からの紹介で初回治療が終了している症例になります。

 

部位別ではグラフのようになり、乳がんと子宮頚がんは検診で見つかった症例がおよそ20%になっています。

その他の部位では他疾患の経過観察中に見つかった症例と、自覚症状があって受診した症例(その他)がほとんどを占めています。

 

次に来院経路(当院受診の際に誰の意志が一番関与しているか)ですが、

1自主的に受診したか、2他施設からの紹介か、3他疾患の経過観察中か、4その他(救急搬送等)に区分されています。

 

来院経緯を部位別に見ると、乳がんと子宮がんは自主的受診が多くなっています

発見経緯から考えると、乳がんと子宮がんは二次検診の適用や、症状があって自主的に当院を受診したということが分かります。

他の部位に関しては他施設からの紹介と、当院で他疾患の経過観察中に診断された症例が多くなっています。

 

部位別の5年間初回治療延べ件数はこのようになっています。

胃がんと大腸がんはコロナ禍の2020年と2021年で治療件数が減少しましたが、2022年はさらに減り、胃がんでは外科的手術・大腸がんでは内視鏡手術の症例が減少しています。

 

肝がんは60歳以上の症例が多くなっており、肝動脈塞栓療法と経過観察・緩和医療が多くなっています。

また、肺がんは2022年症例で、全体の件数が減少したため、治療件数も前年度までに比べると少なくなっています。

 

乳がんの初回治療は、ステージII期まで外科的手術が多く、他院で手術後に放射線治療のため紹介される症例が、毎年1割近くを占めています。

前立腺がんは内分泌療法が基本となり、開始後およそ半年後に放射線治療を行う症例が2割以上を占めています。

 

子宮頚がんでは上皮内癌が全体の約70%以上を占めており、外科的手術が多くなっています。

子宮体がんでは、ステージT以上で手術後に化学療法を伴う症例が、2割から4割を占めています。

 

2022年の診療圏別の登録件数と年齢層別の件数になります。

男性454件、女性417件、合計871件のうち、大館市が80%を占め701件、平均年齢は73.6歳です。

ついで鹿角市・北秋田市、小坂町の順となっています。

 

また、2022年に当院へ紹介された患者さんの紹介元と住所別の件数ですが、大館市内からが一番多く、次に鹿角市・北秋田市の順となっています。

大学病院等からの紹介は全体の1割で53件でした。





11.部位別資料:5大がん+前立腺がん+子宮がん

 

 最後に四国がんセンターの統計方法を参考にした、2022年の5大がん・前立腺がん・子宮がんの各部位毎の統計です。
始めは胃がんになりますが、登録数と男女割合・登録数年次推移など詳細な内容となっています。
5の詳細部位別登録数ですが、国立がん研究センターの規定で、胃の局在コードC16.5胃小弯・C16.6胃大弯・C16.8胃の境界部は使用しないルールとなっています。
同じように大腸では、C18.3右結腸曲・C18.5ひだり結腸曲は使用しない、子宮頚がんは内頚部C53.0と外頚部C53.1に分けない等のルールがあり、当院でもがん登録のルールどおりにコードをつけています。
7のUICCTNM分類では、ステージ別件数は責任症例のみで、診断のみ・初回治療終了後の紹介は含みません。また、8の治療件数は、当院で実施した初回治療のみとなっています。大腸がん・肝がん・肺がん・乳がん・前立腺がん・子宮がんについても同様となっています。


2022年症例のまとめ

部位別の詳細なデータをみても、当院の男性では60歳以降で消化器系がんが大半を占めますが、70代になると肺がん・前立腺がんの割合の方が増えています。
また、女性では30代で子宮頚がん、40代・50代で乳がん、子宮体がん、卵巣がんが大半を占めますが、60歳以上になるとこれらの割合は小さくなり、胃・大腸・肺がんの割合が増えています。 
そして2018年から2021年までは60代70代が全体の50%を占めており、積極的治療も選択肢となっていましたが、徐々に初診時の年齢が高齢化し、ステージが進んだ状態で診断となり、緩和医療を選択する症例が多くなってきています。


個人情報保護・院内がん登録予後調査について

当院では患者さんの個人情報の取り扱いについて、「大館市個人情報保護条例」をはじめとする関連法規に従い、万全の体制で取り組んでおります。
院内がん登録予後調査は、患者さんの受診情報を基本としておりますが、長期に受診されない患者さんについては、国立研究開発法人国立がん研究センターもしくはこれに準ずる機関へ予後調査を依頼する場合があります。その際に患者さんの情報を提供させていただく必要がありますが、情報提供にご同意いただけない場合はお申し出ください。なお、お申し出のない場合はご同意いただけたものとして取り扱いをさせていただきますので、ご理解くださいますようお願い致します。

 

 日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人の時代、がんは早期発見・早期治療で多くが治る病気です。
ステージが早ければ5年生存率が高いことは、国立がん研究センターの調査によって証明されています。がんの予防のため・がんが見つかったら適切な治療を早期に受けるため、当院ではがん検診を推奨しています。
全国の病院で行われているがん登録の診療情報や治療経過は、国立がん研究センターでまとめて管理・分析され、蓄積されてきたデータが、がんと闘う人々に還元されエールになっていきます。
当院のがん登録も当院のがん医療の特性を把握し、上記のようながん対策につなげていくことを目指しています。



大館市立総合病院 がん登録委員会(資料作成 大館市立総合病院がん登録室)



地域がん診療病院に指定されました

 大館市立総合病院は、令和5年3月23日付で「地域がん診療病院」の指定を受けました。これは秋田大学医学部附属病院とのグループ指定となります。指定期間は令和5年4月1日から令和9年3月31日までです。

 秋田県では、都道府県がん診療連携拠点病院として秋田大学医学部附属病院が指定されており、地域がん診療連携拠点病院として秋田厚生医療センターと秋田赤十字病院が指定されています。また、地域がん診療病院として大曲厚生医療センター、平鹿総合病院、能代厚生医療センター、由利組合総合病院、雄勝中央病院、北秋田市民病院が当院のほかに指定されています。

 

 

 

 

 

 

地域がん診療連携拠点病院の指定更新について

 大館市立総合病院は、平成31年3月25日付で「地域がん診療連携拠点病院」の指定更新を受けました。指定期間は平成31年4月1日から令和5年3月31日までです。

 秋田県では、都道府県がん診療連携拠点病院として秋田大学医学部付属病院が認定されており、地域がん診療連携拠点病院として秋田厚生医療センターと秋田赤十字病院が当院のほかに指定されています。また、地域がん診療病院として北秋田市民病院、能代厚生医療センター、由利組合総合病院、雄勝中央病院、大曲厚生医療センター、平鹿総合病院が指定されています。


 専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援および情報提供など、地域がん診療連携拠点病院としての役割をこれからも果たしていきます。

 

 

 

 

 

 

地域がん診療連携拠点病院に指定されました

 大館市立総合病院が平成21年2月23日付で厚生労働大臣より「地域がん診療連携拠点病院」に指定されました。

 秋田県では、これまで都道府県がん診療連携拠点病院として秋田大学医学部付属病院が、地域がん診療連携拠点病院として、平鹿総合病院、由利組合総合病院、仙北組合総合病院、山本組合総合病院、秋田赤十字病院、雄勝中央病院の6病院、計7病院が指定されていましたが、今年大館市立総合病院と秋田組合総合病院の2院が指定されました。

 拠点病院の主な役割には、

 手術や放射線、化学療法など効率的に組み合わせた専門的ながん医療及び緩和ケアを提供すること。

 がん診療に携わる診療所や一般病院へ診療支援や研修を行なうほか、在宅医療との連携など地域のがん診療連携体制の構築を推進すること。

 「相談支援センター」を設置し、患者・家族の相談支援や適切な情報提供を行なうこと

 などがあります。

 4月からは、医療相談室・地域医療連携室に医療相談員に加え、専任の看護師を配置しながら相談支援センターを設置、相談業務や情報提供、地域医療連携の更なる推進を図るとともに、今後とも施設整備、診療体制の拡充に努め、質の高いがん医療を提供してまいります。